今度は伝えなきゃ
申込みをしていた特別養護老人ホームから、入居意向確認の連絡をもらってから約1週間後の土曜日に、母は入居しました。
以前、グループホームへ入居した時、母には何も言わず施設へ連れて行った事が申し訳なく、今回はちゃんと言おう、と思っていました。
認知症の人は「聞いても忘れる」「聞こえているけど(脳が)理解できない」「集中力が続かなくて聞こうとしない」などと言われます。でもわたしは、母はちゃんと聞いていて理解しているんじゃないか、と思う時がよくあります。
騙したような形でグループホームに母を置いて行ったのを、ちゃんとわかっているような気がしていました。気にしすぎかもしれませんが。
だから、今度はちゃんと言おう、と考えていたんです。
入居する日の朝、母はとても機嫌がよかったです。
それまでの1週間は準備でバタバタしていて、もうその日の朝しか話す機会はありませんでした。母に入居の事を言おうとしたら、とても穏やかな笑顔を向けられ、入居の事を話したら、不安になってこの笑顔が消えるんじゃないかと思い、やっぱり言えませんでした。
言おう、言おうとして言えなくて、この笑顔を撮ってから言おう、となんだかんだ延ばしていたら、特養から迎えが来てしまいました。
入居する母の後ろ姿
母はいつものように小規模多機能型居宅介護の通いに出かけるのだと疑わず、るんるんで足取りも軽く、特養の職員に連れられて車に乗り込みました。
わたしは手伝いに来てくれた妹の車に、母の荷物を運び、妹の車で特養に向かいました。わたし達の前を母たちの車が走っていて、母とは別々の車で向かったので、母の様子は全くわかりませんでしたが、時々職員がふいに母の方を向くことがありました。母の上機嫌は続いていて、職員に話しかけていたのかもしれません。
特養の施設に着いても母の上機嫌は続いていて、るんるんと自分から車を降りてきました。そして職員に連れられて奥に歩いて行ってしまいました。
そこまでです。
コロナ禍だったので、わたし達は玄関先までしか行けません。
母が家を出て職員の車に乗り込み、施設に着いて車を降り、奥に歩いて行くまで、わたしの視界には母の後ろ姿しかありませんでした。足取りは軽かったから、朝に見たままの笑顔だったのかなあ。
あーあ、今度も言えなかった。わたしが母に何も言わなかったので、母は上機嫌のまま特別養護老人ホームに入居しました。
母の後ろ姿を見送ったら、急に泣けてきました。コロナが終息するまで面会は禁止なので、入居後の様子を見に行くこともできません。コロナが終息しなかったら会えないままだ、とか考えて「もしかして、これが最期になるのかも」って泣けてきました。
今思うと大袈裟ですが、当時の2022年は、コロナは感染症の2類相当の位置付けで、法律で行動に制限が掛けられていました。
その翌年の5月にコロナが5類になるまで、母とは一度も会えませんでした。







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